「王様〜何処です〜」 
                   
                  「何処にいらっしゃいます?」 
                   
                  叫びながら走ってくるのは、頼りなさそうな体つきの男。 
                   
                  「もうすぐお生まれになりますよ〜」 
                   
                  「何処にいらっしゃるんだろう…」 
                   
                  向こうから、頼りない体格の男とは正反対の体格のいい男が歩いてきた。 
                   
                  「トン、何を慌ててるんだ、王様はもう王妃さまの側におられるぞ。いつものことだが、トンは遅いんだよ。」 
                   
                  「ゴン、僕は城中走り回ってたよ。」 
                   
                  「チャンに言われたんだよ。」 
                   
                  トンは、その場で座り込んだ。 
                   
                  「またチャンの仕業か!ははははははっ… 
                  しかし、王子が生まれるのか、姫が生まれるのか楽しみだな〜。国中お祭り騒ぎだ。」 
                   
                  座り込んでいたトンが、にっこり笑い目尻を下げて 
                   
                  「僕は可愛い姫様がいいな〜一緒に得意の編み物を教えてさしあげたり… 
                   
                  「俺は元気な王子がいいさ。」 
                   
                  トンの話をさえぎるように、ゴンが言った。 
                   
                  「この国の立派な王様になってもらわなくてはいけないからね。一緒に剣の訓練をしてさしあげるんだ。」 
                   
                  「何を話し込んでるんだ君たち。」 
                   
                  廊下の端から叫んでいるのは、チャンだ。 
                   
                  「生まれるよ〜」 
                   
                  トンとゴンが叫んでる声の方に目を向け、声をそろえて言った。 
                   
                  「生まれる!」 
                   
                   
                   
                   
                  同じ日に、街外れの家でも新しい命が誕生した。 
                   
                  「カエデさんおめでとう。元気な双子の男の子よ。」 
 
                  新しいママに双子の赤ちゃんを添い寝させた。 
                   
                  男が慌てて家の中に入ってきた。 
                   
                  「元気な赤ちゃんよ。ふたりとも、目元はハリオに似てるんじゃないかしら。」 
 
                  「とうとうパパとママになってしまったね。名前を考えていたんだよ。双子だとは思ってなかったからね。オモテと…ウランはどうかな?」 
 
                  「お兄ちゃんはオモテ、弟はウランね。オモテ!ウラン!素敵だと思うわ。毎日が楽しくなりそうね。」 
 
                   
                   
                   
                  「まだかしら…」 
 
                  「そう慌てるな、生まれたら男爵がベランダから顔を出すはずだよ。」 
 
外でも、人々がお城の周りに集まってきた。 
祝賀ムードが高まり、今にもお祭り騒ぎがはじまりそうだ。 
 
                  お城の3つある塔の真ん中のベランダに、赤い蝶ネクタイにタキシードでひげをはやした男が現れた。 
                   
                  「こほっん」 
                   
                   
                  「ただいま、王妃様が姫様を無事出産された。とても元気な姫様ですぞ〜」 
                   
                  街中に歓声が上がった。 
                   
 
                  「フレグランスありがとう。こんなかわいい天使を生んでくれ感謝するよ。 
 
                  この子の名は、カオリと名付けよう…」 
                   
             
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      序 章 
       
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